本研究代表者は、過去6年間本研究課題で研究を続けている。その研究成果のうち、誘導物質であるグルコン酸の結合ドメインの解析については、7年度に入ってからいくつかの追加実験をした後、J. Bacteriol. 177 : 4813(1995)に発表した。また、リプレッサーとオペレーターの相互作用に関する知見もMol. Gen. Genet. 248 : 583-591(1995)に発表した。7年度および8年度を通じて、X線解析に耐えるリプレッサー蛋白質の単一の大型結晶を得るための種々の結晶化条件を試みた。さらに、これまでの研究で作成した5種類のDNA結合を失った変異レプレッサーを精製し、これらの変異蛋白質の結晶化も検討した。しかしながら、本蛋白質は、小型の針状結晶を生じるだけで、どうしてもX線解析に耐える結晶を生成させることが出来なかった。本リプレッサーは、本来重合しやすくこれが良質の結晶形成の妨げになっていると思われる。この結晶化と平行して、リプレッサーと誘導物質の相互作用の詳細なキネティクスをフィルター結合法を用いて解析した。本蛋白質は、誘導物質であるグルコン酸とグルコノ-σ-ラクトンが存在するとオペレーターとの結合能を失う。しかし、これらの誘導物質はオペレーターに依存しない非特異的なDNA結合能を増加させる。この非特異的なDNAとの結合能の生理的意義を検討中である。数年前、本研究対象としているGntR蛋白質を代表とするバクテリアの制御蛋白質の亜集団(GntRファミリー)が提唱され、国際的に認知されるに至っている。このところのバクテリアのゲノム解析の進展に伴い数多くの遺伝子産物がこのファミリーに属し、helix-turn-helixモチーフをもつ制御蛋白のファミリーの中で、3番目に数が多い構成集団を形成することが明らかになってきている。このGntRファミリーの制御蛋白質の機能に関してデーターベースより情報をあつめこれらの蛋白質の機能分類も行った。
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