研究概要 |
反応系に各種プロテアーゼ阻害剤(SSI,EDTA,PCMB等)を添加し、豚膵臓エラスターゼの基質であるSuc-Ala-Ala-Ala-pNAを用いて新規酵素のスクリーニングを行った。その結果、熊本周辺の土壌より採取した約2,800株より、熊本県上益城郡矢部町の通潤橋公園内より目的に叶うSN-22株を分離することに成功した。菌学的な諸性質を検討し、SN-22株をStreptomyces griseoloalbusと同定した。酵素の精製は培養上清約1リッターから各種カラムクロマトグラフィーにて行い、電気泳動的に均一なサンプル(酵素名をマシキノシンと命名)を得た。本酵素の最適反応条件はpH9.0、45℃で、pH8.0〜11.0と40℃までの範囲に安定であった。分子量はSDS-PAGE及びゲルろ過共に26,000と推定され、等電点は6.4、また、糖鎖の存在は認められなかった。本酵素の活性はDFPやPMSFにより阻害されたが、Elastatinal、EDTA、ο-phenanthroline、SSIには影響を受けなかった。本酵素は酸化インスリンB鎖のVal^<12>-Glu^<13>の間を速やかに水解し、わずかにGly^<23>-Phe^<24>の間にも作用した。また、還元アルキル化リゾチームのAla^<10>-Ala^<11>、Val^<29>-Cys^<30>、Ala^<32>-Lys^<33>、Ala^<42>-Thr^<43>、Ala^<90>-Ser^<91>、Val^<109>-Ala^<110>間のペプチド結合を水解した。次に、酸化インスリンB鎖1ヶ所及還元アルキル化リゾチーム6ヶ所の切断点近傍(P_5〜P_<3'>)の合成オクタペプチドに作用させたところ、P_1位にアラニンを含有するペプチド、すなわちリゾチームの6から13番目までのペプチド、28から35番目までのペプチド、38から45番目までのペプチド、86から93番目までのペプチドとインスリンの8から15番目までのペプチドに比べ、P_2位にバリンを含有するリゾチームの25〜35番目までのペプチド、105から112番目までのペプチドが速やかに分解を受け、マシキノシンはバリン残基のカルボキシル末端ペプチド結合を特異的に水解することが明らかとなった。また、これらの基質の他に、カゼインやエラスチンにも作用することから、マシキノシンはバリン残基に特異的なエンド型プロテアーゼであると結論した。
|