1.水酸基の役割を調べるためのプローブ。1′-デオキシ体ならびに1′-デオキシフルオロ体、8′-フルオロ体を合成し、それらの光学活性体の阻害活性を、イネ第二葉鞘伸長ならびにレタス種子発芽、アミラーゼ誘導、ムラサキツユクサ気孔開放の各試験を用いて測定した。その結果、前二者がともにアブシジン酸よりも弱い活性を示したことから、1′位水酸基はプロトンドナーとして受容体と水素結合していることが示唆された。8′-フロオロ体の活性はアブシジン酸とほとんど変わらなかったので、代謝によって導入される8′位の水酸基は活性発現にほとんど関係していないことも示唆された。 2.分子の対称性を調べるためのプローブ。6員環部がジメチルベンゾキノンの対称性アナログならびに6員環上の三つのメチル基のアルキル化アナログを合成し、活性を測定した。アルキル化アナログは全て光学分割後、試験を行なった。その結果、対称性アナログがアブシジン酸の(+)体と(-)体の中間の活性を示すこと、(-)-7′アルキル体と(+)-9′アルキル体の活性の低下が相関していたことから、アブシジン酸の擬似軸対称性仮説は概ね正しいことが判明した。(+)-8′と9′位アルキル体の活性低下が小さかったことから、8′位と9′位周辺 には空間的余裕があることも判った。さらに、(-)-8′アルキル体の活性低下が著しかったことから、この仮説に基づいて、アブシジン酸の2′re面は受容体と重要な相互作用をしていることが初めて明らかとなった。
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