研究概要 |
1)活性コンフォメーション解析用プローブの合成。5′α,8′-ならびに5′β、9′-シクロアブシジン酸は、8′-と9′-モノフルオロアブシジン酸をアルカリ処理することによって合成した。2′α,3′α-と2′β,3′β-メタノアブシジン酸は、オキソイソホロンをジメチルオキソスルホニウムメチリドを用いてシクロプロピル化した後、側鎖を導入し合成した。前2者のアナログは6員環のコンホメーションが変化しても、常に9′位がそれぞれほぼ擬エカトリアル方向とアキシャル方向にある。後2者のアナログは、それぞれが側鎖擬エカトリアルの半イス型と側鎖擬アキシャルの半イス型コンフォメーションを有することを核オーバーハウザ-効果より確認した。 2)生物試験。天然型のアナログのイネ芽生え伸長、レタス種子発芽、α-アミラーゼ誘導、気孔開放に対する阻害活性を調べた。その結果、5′α、8′-シクロアブシジン酸がアブシジン酸と同等の活性を示したのに対して、5′β、9′-シクロアブシジン酸はの活性は極めて低かった。また、2′β,3′β-メタノアブシジン酸は中程度の活性を示したが、2′α,3′α-メタノアブシジン酸は不活性であった。このことより、アブシジン酸の活性コンホメーションは、側鎖擬エカトリアルの半イス型ではなく、側鎖が擬アキシャルの半イス型に近いことが判明した。 3)まとめ。これまでの結果より、光アフィニティーラベル実験を行うためのアブシジン酸への光反応性官能基の最も効果的な導入部位は、結合部位との距離が遠い6′位側よりも結合部位との距離が比較的近い2′、3′位のre面側であると推定される。しかし2重結合に官能基を追加することは困難なので、側鎖擬アキシャルの半イス型が安定コンホメーションとなる2′、3′-ジヒドロ体の2′α位側にジアゾ基を導入したアナログが最も妥当と考えられる。
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