研究報告 初めに、光照射条件下ならびに暗黒条件下で培養したE.gracilis Z(植物細胞モデル)およびE.gracilis SMZ(動物細胞モデル)のUV-Bに対する障害について調べた。 障害の指標の一つとして細胞内ハイドロパーオキシドを、ジクロロフルオレシンダイアセテート(DCFH-DA)を用いて、微弱蛍光法により測定した。 結果は、葉緑体を有する株、つまり光照射条件下にあるZ株(Z-LD)のみUV-B照射により生成すると考えられる細胞内ハイドロパーオキシドは低いレベルで推移した。そこでチラコイド膜に局在する含硫糖脂質SQDGおよび同様にスルホン酸基を有するタウリンに注目し、モデル実験系であるリポソームでそれらの脂質過酸化に対する抑制効果の有無を調べた。脂質過酸化はAAPH(水溶性酸化開始剤)およびUV-B/3-ヒドロキシキヌレニンにより行い、MCLA発光法、イソルミノール発光法を用いた極微弱光分析法により、その過酸化の程度を測定した。 結果はAAPHが惹起する脂質過酸化において、SQDG、メチル化SQDG、タウリンのすべてに抗酸化性が認められたが、UV-B依存脂質過酸化においては、SQDG、メチル化SQDGでは逆に脂質の過酸化を促進した。一方、タウリンは何の効果も示さなかった。 以上が平成7年度の研究報告であるが、このことからSQDG単独の抗酸化能はラジカル捕捉効果によるもので、またE.gracilis Z(Z-LD)の細胞内では他の抗酸化物質とのシネルギスト効果が働いているのでないかと推察され、次年度はこの点についても検討したい。
|