老化は細胞機能の低下を引き起こすが、骨格筋においても委縮などの影響が見られる。老化に伴う骨格筋タンパク質の機能低下がタンパク質の非酵素的な修飾によるものである可能性が考えられることから、以下の実験を行った。 1.骨格筋タンパク質の酸化修飾を4週齡、9か月齡、17か月齡ラットにおいてタンパク質カルボニル基含量と抗DNP抗体を用いたウエスタンブロットから解析した結果、加齡により骨格筋タンパク質の酸化修飾が亢進することを認められた。酸化修飾はミオシンATPase活性を低下させたことから、加齡による修飾が収縮機能にも影響を与えている可能性が示唆された。継代した培養筋管細胞についても同様の解析を行ったが、有意な差は認められなかった。 2.ラット骨格筋のスーパーオキサイドデスムターゼ活性は加齡により顕著に減少し、グルタチオンパーオキシダーゼは増加した。 3.骨格筋タンパク質の分解速度は加齡に伴い著しく減少した。このとき、どの月齡においても非リソソーム系分解活性の割合には変化がなかった。 4.加齡による骨格筋のタンパク質の非酵素的糖化(グルケーション)を抗AGE抗体を用いたウエスタンブロットで解析したところ、加齡に伴うグリケーションの変化は見られなかった。 以上の結果から、骨格筋においては加齡に伴うSOD活性の低下から消去できなかった活性酸素がタンパク質を攻撃し、一方タンパク質の分解速度は遅くなるため、酸化修飾されたタンパク質が蓄積し、それが収縮機能に影響を及ぼすものと考えられた。しかし、グリケーションは酸化修飾より顕著に進行しないものと考えられた。
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