1.実験装置の作製 庫内温度および試料まわりの風速が調節可能な遠赤外線解凍装置を作成した。遠赤外線ヒーターには放射率の高いセラミックヒーターを用い、解凍庫の庫外に設置した。 2.解凍数学モデルおよびプログラムの作成 解凍数学モデルとしては、見かけ比熱モデル(融解にともなう潜熱を見かけ上比熱に含めるモデル)を用いて数式化した。さらに、有限要素法(ガラーキン法)を用いて、2次元熱伝導解析用(円筒形用、平成7年度)および3次元熱伝導解析用(任意形状、平成8年度)プログラムを作成した。なお、数値計算に必要な熱物性(比熱、密度、熱伝導度)は文献値を採用した。 3.実験および数値計算結果 試料としては凍結まぐろを使用し、水分蒸発を防ぐために試料を食品包装用フィルムで覆った。解凍速度に影響を及ぼす、ヒーター温度、試料厚さ等の条件を変えて実験を行い、数値計算結果との比較を行ったところ、両者は良好に一致し、見かけ比熱モデルで試料内温度分布を予測できることがわかった。その際、解凍時間を短縮するためにヒーター温度を高くした場合、試料表面が過熱されるため、試料表面の変色とドリップの流出が認められ品質の低下が起こった。そこで、試料表面温度を上昇させないために、遠赤外線を断続的に照射する方法と遠赤外線ヒーター温度を途中で下げる方法を検討した。その結果、両方法により試料表面の変色やドリップの流出が起こらず、まぐろの品質を低下させずに解凍できることがわかった。また、食品包装フィルムで試料を覆わない場合、試料表面温度が上昇すると水分蒸発が起こった。しかし、表面温度を10℃以下にコントロールした場合は水分の蒸発はほとんど起こらず、品質に及ぼす水分蒸発の影響は少ないことがわかった。
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