(1)酸化的ストレスをもたらすと考えられるエンドトキシン(lipopolysaccharide:LPS)投与および四塩化炭素投与を通常ラットに行った場合に、尿中のビリルビン(BR)酸化物のレベルが著しく上昇した。そしてこれらの投与によって、BR生合成の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の肝臓でのmRNAレベル、抗原量および活性が著しく上昇した。これらのことは、BRが生体内抗酸化物質として機能していることと、BR合成系が酸化ストレスの負荷に応答して活性化される系であることを示している。 (2)ODSラットを用いて、ビタミンC無添加飼料群にLPS投与を行ったところ、尿中BR酸化物レベルの著しい上昇が観察された。この時に肝臓のHO-1も著しく誘導(mRNAレベル、抗原量、活性)された。LPS投与による尿中BR酸化物の増加と肝臓のHO-1の誘導は、ビタミンC添加飼料の摂取によって明らかに抑制された。これらのことは、ビタミンCが生体内抗酸化物質として機能し、酸化的ストレス下での活性酸素によるBRの酸化とHO-1の誘導を抑制していることを示している。 (3)ODSラットにLPS投与を行ったときに増加する尿中BR酸化物を解析したところ、biotripyrrin-aおよび-bが存在することが明らかとなった。このことにより、ヒトの尿中に存在するこれらのBR酸化物がラットの尿中に存在し、LPS投与により増加することも判明した。そして尿中のbiotripyrrin-aおよび-bのLPS投与による増加はビタミンCの摂取によって著しく抑制されていた。 (4)インスリン依存性糖尿病(IDDM)の自然発症モデル動物であるNODマウスを用いて、各個体における血糖値の変化と尿中BR酸化物のレベルの変動を追跡した。血糖値上昇の見られる15週令以降より前の10-14週令時に尿中BR酸化物レベルの一過性の上昇が存在することを見いだした。また、マウスの膵臓ランゲルハンス氏島(ラ氏島)を単離して培養した結果、ラ氏島がBR酸化物産生能を有することを確認した。これらのことは、尿中BR酸化物の上昇はIDDM発症の有効な予知マーカーである可能性を示唆している。
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