n-3系およびn-6系高度不飽和脂肪酸(PUFA)の酸化およびタンパク質との相互作用について熱分析的検討を行い、以下の知見を得た。 1.熱重量法(TG)、示差走査熱量分析およびガスクロマトグラフ法によってn-3系およびn-6系PUFAの酸化過程を測定し、n-3系とn-6系PUFAの酸化過程を表現する速度式は異なり、n-6系PUFAの全酸化過程は自触媒型の速度式で表現できるが、n-3系PUFAは未酸化率が0.5以上では自触媒型、それ以下は未酸化率の1次式で表現できること、その差異はPUFAと酸素との量論係数の差により、酸化反応速度式が自触媒型で表現できる場合にはPUFAと酸素の量論係数は1であるが、そうでない場合にはPUFAに対する酸素の量論係数が酸化の進行に伴い増加すること、および酸化過程に対する活性化エネルギーはPUFAの種類にはあまり依存せず、PUFAによって酸化のされやすさが異なるのは、頻度因子の差に起因すること、を明らかにした。 2.糖またはタンパク質と相互作用したPUFAは熱的に安定であり、蒸散または分解され難く、これをPUFAの重量変化としてTG法により測定することにより相互作用の有無を評価できることを示した。本法を用いて、PUFAとシクロデキストリン(CD)との相互作用について詳細に検討し、PUFAは程度は異なるもののα-、β-およびγ-CDのいずれにも包接され、その包接率をTG法によって求められること、n-3系とn-6系PUFAではCDとの包接体形成の見掛けの量論関係に差異があること、およびCDに包接されたPUFAはきわめて酸化されにくいこと、などを明らかにした。
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