研究概要 |
食品タンパク質の消化産物であるペプチドは、小腸で効率よく吸収され、アミノ酸へと分解される。この分解には小腸上皮細胞内アミノペプチダーゼが関わっており、その活性は高タンパク質あるいはペプチドの摂取により上昇することが知られている。この活性上昇機構を明らかにする為、まず活性上昇がもたらされている酵素の特定を試みた。 小腸上皮細胞由来のIEC18細胞を小麦グルテンのアクチナーゼ水解物を添加した培地で培養した結果、細胞中のLeucine-β-naphthylamideに対するアミノペプチダーゼの比活性が、培養2〜3日目にペプチド無添加で培養した場合に比べて、約50%上昇した。また、小麦グルテン水解物と同組成の遊離アミノ酸溶液を添加して培養した場合には、アミノペプチダーゼの活性上昇は認められず、小麦グルテン水解物によるその活性上昇がペプチドにより惹起されていることが明らかとなった。次に、どのアミノペプチダーゼの活性が上昇しているかを調べる為に、まず大量培養したIEC18細胞の抽出液をDEAE-セルロースカラム(10mM Tris-HCl緩衝液,pH7.2を使用)にかけ、アミノペプチダーゼを検索した。その結果、少なくとも4種類のアミノペプチダーゼの存在が明らかとなった。さらに、ペプチド添加した培養液で大量培養した同細胞のアミノペプチダーゼを同様に分画した結果、0.12M NaClで溶出したダミノペプチダーゼの比活性が、無添加の場合に比べて著しく上昇することが判明した。このアミノペプチダーゼをさらに精製し、性質をしらべた結果、分子量が約100,000で、至適pHを6.5に有する金属酵素であることが明らかとなった。今後は、ペプチドによる本酵素の活性上昇機構をさらに詳細に検討する予定である。
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