研究概要 |
本研究では、まずモノエン型あるいはジエン型トランス酸のラット肝臓における代謝特性を明らかにするため、それぞれ同じ鎖長と不飽和度をもつシスおよびトランス型不飽和脂肪酸を用い、ラット単離肝臓潅流法により実験を行った。その結果、トランス酸は、酸化系へ代謝されやすく、エステル化系へ代謝されにくいことを見出した。この脂肪酸代謝の肝臓における変化は、肝臓からのトリグリセリドの分泌低下を招くことを観察した。次いで、スレオニンインバランス食ラットの脂肪肝モデルでトランス酸を摂取させた場合、トランス酸は明らかに抗脂肪肝作用を示すことを観察した。 以上の実験結果より、水素添加処理により生じたトランス型不飽和酸のうち、エライジン酸あるいはリノールエライジン酸のように9あるいは9,12位がトランス配位の脂肪酸は、対応するシス酸であるオレイン酸あるいはリノール酸に比べむしろ血清脂質像の改善ないし脂肪肝を抑制する生理機能があることを本研究により明らかにした。さらに、水素添加油脂中の特定の脂肪酸が我々の健康にとって必ずしも悪影響を与えないことを明らかにした。
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