インディカ米を炊飯するとパサパサとして粘りがない。われわれは、インディカアミロペクチン分子には、ジャポニカには見られない特異な構造、すなわちアミロース様の長い側鎖(最長鎖)が組込まれていることが、その原因であることを示唆した。ここでは、この特異な構造の成因を明らかにするために、分岐をつくる枝つくり酵素をインディカ(西海184号)とジャポニカ(西海194号)の稲胚乳から精製して枝つくり作用を調べた。 まず、西海184号と西海194号の稲胚乳澱粉のアミロペクチンの分子構造を分析した。最長鎖画分は、西海184号と西海194号で13と1%で、短鎖画分は、西海184号が64%、西海194号が74%であった。このようにインディカはジャポニカに比べて、最長鎖が非常に多く、短鎖が少ないことを確認した。次に、これら2種の稲胚乳(開花後20日)の枝つくり酵素の活性染色から、西海184号、西海194号ともに2種のアイソフォームがあり、量的に異なることを認めた。さらに、主成分の酵素画分をButyl-Toyopearl、DEAE-Sephadex FF、Mono Q、Superose 12、Amylose-Sepharose 6Bのクロマトグラフィーで精製し、アミラーゼ活性を全く含まないほぼ均一な酵素標品を得た。これらの酵素標品は、ホスホリラーゼ活性促進法と分岐結合測定法による活性比は同じで、枝つくり作用は、いずれも長い側鎖を優先的につくる酵素であった。今後、副成分の酵素も精製し、結果を総合してアミロペクチンの分子構造との関係を考察したい。この枝つくり作用は、トウモロコシ胚乳の2種の酵素のうちのBEIに類似するが、生じた短鎖の重合度分布が明らかに異なった。また、トラマメ種子に唯一存在する短い側鎖を優先的につくる酵素と異なった。これらは、植物種で枝つくり酵素の枝つくり作用が異なること示し、アミロペクチンの分子構造が植物種で個性のあることと関連して興味ある結果である。
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