研究概要 |
ビタミンAの代謝およびビタミンA代謝物の生理作用を解明するため、ビタミンA欠乏ラットに各種ビタミンA同族体を投与してその代謝物を当研究室で確立したHPLC法により定量した。その結果、ビタミンA欠乏ラットの血液中ではレチノール及びレチノイン酸(RA)は検出レベル以下であったが、レチノールをsingle doseしたビタミンA欠乏ラットでは2時間で血中にレチノールが検出されることが明らかとなった。興味深い結果として、レチノイン酸はレチノールより短時間の間(1時間)に血中で検出された。このとき検出されたレチノイン酸をさらに詳細に解析したところ、all-trans-RA,9-cis-RA,9,13-cis-RAおよび9,13-di-cis-RAと言ったRAの幾何異性体が血液中で検出された。特に注目される結果は、正常ラット血液中では検出されない9-cis-RAが検出されたことであり、このことはRAの各幾何異性体に固有の生理作用が存在することを暗示しており、今後解析すべき問題が提起された。また、レチノイン酸体内レベルの異なるラットを各作製し、ビタミンAレベルに鋭敏に応答するRARβ遺伝子発現量をノザンブロット法により測定することで、レチノールとレチノイン酸のどちらがビタミンAの生体内レベルでの指標として適当なのか評価した。その結果、RARβ遺伝子発現量は体中レチノール量に比べ、体中レチノイン酸量とより高相関性のあることが明らかとなった。この結果より、これまでビタミンA生理量の指標とされてきたレチノールに代え、むしろレチノイン酸量がより厳格に生理的ビタミンAの状態を示す指標になることが証明できた。また、レチノイン酸依存的に誘導されると考えられるKT-1の発現特異性を調べたところ、複雑でさらに検討が必要なことを明らかにした。
|