動物の大腸内に常在している細菌は、様々な宿主にとって有害・有益な代謝を行っていることが知られている。本研究は大腸ガン発生との関係で注目されている腸内細菌のβ-グルクロニダーゼの効果的な活性抑制法の確立を目的として行い、以下の新たな知見を得た。 1.α-ナフトール AS-Bl β-Dグルクロニドを基質とする活性染色を用いたポリアクリルアミド電気泳動法によって、糞便中のβ-グルクロニザ-ゼアイソザイム別酵素活性の測定法を確立し、これによって各検体の酵素の生産菌種別の活性測定が可能となった。 2.ラット盲腸内容物から本酵素生産菌を嫌気性菌・好気性菌合わせて50株分離した。簡易同定を行い、その生産菌株を大量培養し、β-グルクロニダーゼをカラムクロマトグラフィにより精製、その酵素化学的特徴、電気泳動時のバンド位置を調べ、β-グルクロニダーゼアイソザイムによる菌種分類を行っている(継続中)。 3.腸内細菌の生存環境をin vitroで再現する目的で簡易流下式バッチ糞便培養系を試作したが、β-グルクロニダーゼ活性の安定性が悪く、また1日経過後の菌叢構成が著しく変化した。このため、この実験系を用いて行う予定であったin vitroにおけるβ-グルクロニダーゼ活性制御の研究が進展しないため、現在、流下型バッチ糞便培系の改良と、ラットを用いたin vivoにおける活性抑制実験系の両面から検討中である。 現在までのところ、ほぼ計画通り研究が進展している。次年度はさらに多くのβ-グルクロニダーゼ生産菌を分離し、今年度確立した活性分別定量法を確固たるものとする予定である。
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