食物成分によって、大腸内に常在する腸内細菌のβ‐グルクロニダーゼ代謝にどのような影響を与えるか昨年度、確立した電気泳動・活性染色法によるアイソザイム分別定量法を用いて検討した。香辛料をラットに投与すると、β‐グルクロニダーゼ活性が用量依存的に上昇する結果を得たが、この変化を活性染色法では、酵素活性の大部分はEscherichia coliに由来し、活性の変化はEscherichia coliの酵素バンド変化としてのみ検出した。現在の問題は、下記の二点である。 1.昨年度に用いた6‐ブロモ‐2‐ナフチル‐β‐Dグルクロニドを用いた活性染色では、まだまだ検出活性が高く、活性の弱いアイソザイムの検出には不向きであることがわかった。したがって、昨年度後半に取り入れ始めたα‐ナフトールAS‐BI β‐グルクロニドを基質としてファストブルー塩Bを用いた染色、さらにより好感度を期待してα‐ナフトール AS‐BI β‐グルクロニドを基質として用いた活性染色では、hexazotized pararosanilinを用いて、不溶性の赤色バンドを得る方法などを検討し、改善をみたが未だに感度不足であり、蛍光法などによるより高感度の検出法の必要性がわかった。 2.前年度の分離β‐グルクロニダーゼ生産菌は、その酵素生産の安定性が悪く、保存中に生産性を失った。現在、再現性の高いアイソザイムは、Escherichia coli由来の酵素とBacteroides fragilis由来の酵素の2種類である。 以上の結果から、当初の目的を十分に達成することはできなかったが、β‐グルクロニダーゼアイソザイムの電気泳動・活性染色による活性変化が可能なことが確認でき、より高感度な染色法開発によって、さらに研究を進展できることがわかった。
|