大種子から発芽した実生は被陰下や貧栄養下など環境ストレスが大きなハビタットでの生存率が高いことが知られている。これは環境資源の不足を種子の貯蔵養分を消費することによって補償しているためであると考えられている。しかし、種子の貯蔵養分が、実生の成長にいつどれぐらい寄与しているのか?また、ストレスの種類や強度と種子貯蔵養分の消費速度の関係等についても知見が極めて少ない。今回は、クリとミズナラの堅果を異なる光強度・土壌養分下に播種し、実生の成長と種子貯蔵養分の消費速度の関係を解析した。 実験はクリとミズナラそれぞれ、種子サイズを大・中・小の3段階、光強度をオープン(相対光強度100%)と被陰(同80%)の2段階、土壌養分条件を施肥区と対照区の2段階に分け、1995年3月に農場の苗畑に播種した。 被陰下では、土壌の養分条件に拘わらず種子貯蔵養分の消費速度はミズナラよりクリが速かった。これは強光利用型のクリが弱光下におけるカーボンバランスの悪化を補償するために貯蔵養分を消費したためであると考えられた。また、クリ、ミズナラともに、無施肥区の方が種子貯蔵養分の消費速度が施肥区に比べ有意に速かった。環境からの資源供給量が実生の資源要求量よりも不足すると種子貯蔵養分の消費速度が加速されると考えられた。一方、光・土壌養分ともに豊富な環境下では、クリよりもミズナラの方が早い時期に貯蔵養分を消費した。順次展葉型のクリに比べ、ミズナラは2次伸び(一斉開葉)を繰り返して成長を続けたが、2次伸びの際に一斉に貯蔵養分を消費していることが分かった。 2種ともに、種子貯蔵養分の消費速度は種子サイズの大小に拘わらず同じであり、種子サイズは消費可能な貯蔵資源量の大小として重要であると考えられた。種子貯蔵窒素の転流については現在分析中である。
|