1)落葉広葉樹種子の窒素含有率クリの種子の窒素含率は、異なる土壌栄養条件(尾根・谷等)で生育している母樹間でも、また同一の母樹内の種子サイズの違いによっても差がなくほぼ一定であった。 2)落葉広葉樹当年生稚苗の窒素利用効率クリの実生の成長に及ぼす種子の貯蔵養分(種子由来窒素14N)と環境の資源量(肥料由来窒素15N)の相対的貢献度を明らかにするため、重窒素ラベル肥料レベルを2段階・種子サイズを3段階に変えて栽培試験を行った。出現後80日目のクリの実生重は、小窒素区(1.42N/ /80days)では大種子ほど大きいものの、多窒素区(14.2N/ /80days)では小種子ほどRGR(相対成長率)が高く、小種子由来の実生が大種子由来の実生とほぼ同等となった。RNG=SLA★LWR★NARで示される。多窒素区では小種子由来の実生ほど高いLWR(個体重当たりの葉重)をもち、さらに、施肥由来窒素の吸収割合が高かった。その結果、小種子由来の実生ほど葉の窒素濃度が高くなり光合成速度が増加したことによりNARが増大しRGRの増大に繋がったものと考えられた。クリの実生の成長は、土壌の栄養条件の違いにより種子サイズへの依存性が異なることが明らかになった。 3)食植性=翅目昆虫の食害対する窒素並びにタンニンのおよぼす影響ナミスジフユナミシャクの大発生に際し、ミズナラの葉の食害率は樹冠部分(54%)が後生枝(81%)より高かった。この違いは防御物質であるタンニンが光合成を盛んにしている樹冠部分(窒素濃度が高い)に重点的に配分されているためであることが明らかになった。
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