1.新潟県苗場山の山地帯上部〜亜高山帯下部における群落の分布・構造と立地環境特性 (1)山地帯(ブナ帯)と亜高山帯(オオシラビソ帯)の境界高度が地形によって大きく変動しており、均質な斜面上でのブナ林の分布上限高度(1700〜1750mくらい)が、これまで言われてきた垂直分布高度(新潟県では1500mくらいまで)よりも高いところにあった。海抜1750mの尾根上にコメツガ優占林が分布していた。(2)ブナ林と、それにオオシラビソを混交した林分では林床植生の特徴が比較的似通っていたが、針葉樹(オオシラビソ、コメツガ)の優占する林分では、それとはかなり異なり、亜高山帯針葉樹林に特有の種類を多く含んでいた。(3)ブナ林の土壌(暗色系褐色森林土)では、表層部における養分状態や有機物の分解が良好であったが、オオシラビソ林(湿性鉄型ポドゾル化土壌)とコメツガ林(乾性ポドゾル化土壌)、とくに後者ではそれが不良であった。 2.苗場山小松原湿原付近の緩傾斜地(海抜1580m)におけるオオシラビソ・コメツガ混交林の構造と更新様式 (1)樹木の分散構造は両樹種とも全階層で集合性を示した。コメツガは同種の階層間で正の分布相関を示した。(2)オオシラビソの実生はあらゆる場所に定着していたが、コメツガの実生はササのリターがない根株・マウンド上にのみ定着していた。オオシラビソの稚樹は根株・マウンド上およびその周辺の地表に多く成育していたが、地表に定着した個体が最終的に上層へ達すると考えられた。(3)微地形的に凸形の場所に樹木、とくにコメツガが多く成育していた。平坦な場所では土壌が埴質でオオシラビソが成育していたが、根返り木も多く見られた。このような根返り木によるマウンドがコメツガの更新機会を増大させ、そこでの同所的な更新を可能にしていた。(4)以上のような立地条件と更新様式の違いにより、オオシラビソとコメツガの混交林が形成・維持されていた。
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