(1)河畔林の定義づけ 河畔林を対象とした生態学的及び地理学的な研究はこれまで欧米を中心に発展してきたため、わが国で河畔林研究を実施するにあたっては、まず、河畔林と称し得る林分を明確に定義する必要がある。本年度は、まず、これまでの研究で取り上げられた河畔林の分布位置、構造、種特性、土地利用との関連性について、主として外国文献を中心に整理した。その結果、一般に欧米で河畔林と称される河川沿いの林分は、わが国では沖積平野など大規模流域の中流部より河口までの間に存在するヤナギ科およびカバノキ科の樹林帯に相当することがわかった。わが国で河畔林もしくは渓畔林と呼ばれている山地流域の林分は、むしろ渓谷林として、欧米での河畔林と区別した方が混乱を招かないと思われる。また、山地流域では段丘堆積地など河床に成立した林分と、河岸から山腹斜面にかけて成立している林分を外見上、明確に区分することが困難であるため、本研究では林分の分布位置、成立要因、林齢、種構成などを基準に河畔林もしくは渓畔林の定義と立地区分をおこなった。 2)研究の対象とした河畔林 岐阜県奥飛騨地方の高原川支流の白出沢、岐阜県東濃地方の落合川支流の温川、並びに静岡県の安倍川源流域に存在する河川沿いの林分を調査の対象に選定した。白出沢にはサワグルミとカツラの林分が、温川にはヒノキとヤシャブシの混交林分が、また安倍川にはヤマハンノキの林分がそれぞれ河床から河岸にかけて成立している。いずれも人為の影響をほとんど受けていない状態で、林齢は若齢から老齢までさまざまである。 (3)調査研究の経緯 現地において、対象とすべき林分の選定、分布域の把握、調査林分の区割りと面積測量、地域測量、毎木調査、堆積礫の粒径測定などを実施した。次年度は、これらの調査、計測を引き続き実施するとともに、航空写真を利用して林分の推移、破壊と再生の実態を調べ、河床変動との関連性を考察する予定である。
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