1.河畔林の群落構造と流水の影響 2箇所の砂防ダム背後の堆砂域に成立する木本群落を対象に群落の構造を調査した。上層木であるフサザクラやバッコヤナギ、下層のウツギ群落の上伸成長及び肥大成長は堆砂域の幅と関連し、幅の広い下流側ほど良好で、密生する傾向が認められた。生長錐を使用して樹齢を調べたところ、過去の大規模出水時と対応することが判明した。さらに、堆砂域の横断的な微地形変化に応じて木本類及び草本類の分布が異なった。群落構造の縦断方向での相違に関しては、樹高・直径分布が上流側と下流側で異なること、水面からの比高に大差ないにもかかわらず、上流側ほどイヌコリヤナギなどの下層木やツルヨシ・ススキ群落の専有面積率が増加することなどがら、出水時における流水及び流出土砂の影響を上流側ほど受けやすく、また、木本群落の破壊頻度の高いことが推察された。さらに、堆砂域の中央に存在する微高地が側方からの流水の影響を緩和していることがうかがわれた。 2.河畔林の樹種構成と冠水頻度 砂防ダム等の横断工が存在しない流域において、河床横断形状と河畔の木本群落の分布を対比した。その結果、年に数回冠水する箇所は裸地状態か、若しくはヤナギ低木林が分布し、冠水が1〜数年確率で生じる箇所にはヤナギ高木林が上層を構成し、下層にはタニウツギやフサザクラの若齢林が認められ、冠水が数十年に1回という箇所にはヤナギが欠落して、サワグルミ、ミズメアカシデ等の広葉樹混交林が形成されるなど、水面からの比高や現流路からの隔たりに応じて樹種構成の異なるタイプの林分が縦断方向に並列して確認された。したがって、冠水頻度が河畔林の群落構造に深く関与していると推察された。
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