研究概要 |
カラフトヒゲナガカミキリ雌成虫から産卵箇所を通して伝播されたニセマツノザイセンチュウは,産卵箇所を中心とした半径0.75cmの樹皮内に少なくとも24時間留まる事が示された。カラフトヒゲナガカミキリ雌成虫の摂食箇所からのニセマツノザイセンチュウ伝播数と産卵箇所からのニセマツノザイセンチュウ伝播数を実験的に調べた。その結果,媒介昆虫の保持線虫数のうち平均17%が産卵箇所を通して,6%が摂食箇所を通して伝播されることが示された。カラフトヒゲナガカミキリの配偶行動を通して,ニセマツノザイセンチュウがカミキリ成虫間を移動できる事が実験的に示された。ニセマツノザイセンチュウの場合,カラフトヒゲナガカミキリ成虫の雄から雌への移動に比べて,雌から雄への移動は起こりにくいことが示された。さらに,カラフトヒゲナガカミキリ雄成虫から雌成虫に移動したニセマツノザイセンチュウが産卵箇所を通してマツに伝播される事が示された。マツノザイセンチュウは,マツノマダラカミキリの産卵箇所からアカマツ丸太に伝播される事が実験室で確認された。二つの伝播様式を組み込んだ材線虫病類の伝播モデルを作成した Y(t)=(β_1α+β_<11>b)X(t)Y(t-1) ここで,Y(t):t年の感染木密度,X(t):t年の健全木密度,α:材線虫類による死亡率(病原力),b:材線虫類によらない死亡率,β_1:健全木への伝播率,β_<11>:材線虫類によらない枯死木への伝播率とする。このモデルを用いて,マツ林におけるセンチュウの伝播率を推定したところ,病原力のないニセマツノザイセンチュウは0.11(1993-1994年の結果)で,病原力がほぼ1.0のマツノザイセンチュウの0.0062より大きかった(1980-1983の結果)。
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