担子菌の核と染色体の大きさは非常に小さく光学顕微鏡上での染色体数を調べることはむずかしい。パルスフィールド泳動法は通常、電気泳動では分離出来ない巨大分子の分離の方法として優れた方法である。担子菌ではシイタケ、タモキタケ、スエヒロタケ、ヒトヨタケ等でCHEF泳動により染色体の分離が行なわれている。しかし、CHEF泳動による染色体分離は染色体DNAの分子量が類似している場合は染色体の分離が非常に困難である。エノキタケの場合も二核菌糸の2本の染色体がダブレットのバンドであることがエチジウムブロマイド染色により予測された。 エノキタケはCHEF泳動により一核菌糸と二核菌糸の染色体数は6本と8本が認められたが、10個の遺伝子を用いてサザンハイブリダイゼーションを行なった結果、エチジウムブロマイド染色では明瞭なバンドが観察出来なかった二核菌糸の染色体IIとVIIで明瞭なバンドが得られた。またIV、VとVIの3つの染色体はほぼ重なっていることが判明した。以上の結果より一核菌糸と二核菌糸の染色体数はそれぞれ6本と12本であることがわかった。そしてサザンハイブリダイゼーションによる一核菌糸と二核菌糸のハイブリダイズのパターンの比較により全染色体の相同性を明らかにした。今回用いた子実体形成に特異的に発現する10個の遺伝子はエノキタケ染色体上に散在して位置していた。 タモギタケの担子柄をDAPIで染色し共焦点レザー顕微鏡を用いて染色体の観察をおこなったが、染色体が非常に小さいためと動、植物の染色体観察時に用いられるコルヒチン処理は効果がなく新たな処理法の検討がひつようである。
|