ナイフを材面にたてながら傷をつける切削加工を、ここでは、圧入加工(切削)と呼ぶ。この研究では、圧入加工を木材の切断加工に用いることの可能性について検討した。 まず、ナイフ状工具について限界の圧入深さを実験的に調べたところ、限界の圧入量は数ミリメートルであったが、これには圧入角度、刃の形状が深く関連し、圧入角度には最適値があり、それはかなり小さい値であることが明らかになった。 しかし、ナイフ状工具の刃先先端には負荷が集中的に加わり、刃先の損傷が著しいことが認められた。 ナイフ状工具の結果を踏まえ、周辺に刃を付けた円盤状工具の使用が有効ではないかと推定し、その加工性能を実験的に検討した。その結果、円盤状工具では気乾のすぎ無欠点材の場合に、20mmまで切断でき、さらに、より深い圧入も可能であろうと思われた。しかし、節に対する加工では無欠点材の4〜7倍の圧入力や送り力になり、実用的には節は大きな障害になることが予想された。また、加工時に割れが発生し、高含水率の材の加工では、加工変質層が小さくなる傾向にはあるが、良好な加工面を形成する点では問題が残った。 圧入加工は鋸屑と騒音がでない点が有利で、歩止まり向上、作業環境向上に役立ち、今後に期待される加工法の可能性がある。しかし、切断できる厚さにかなりの制限があると思われるので、圧入加工は製材の丸太の大割のような大規模な加工には向かず、加工面性状を余り問題にしない木質材料用の材料の生産などの小割工程に有効と考えられる。
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