第2年目である本年度は、精密に制御された表面物性を持つ紙に対する色彩画像情報の転移と人間の感覚による受容性の問題が中心であるが、手法としては紙の物性値の各種評価法、色彩科学的測定法、感性工学的測定法を用いた解析を行った。実績の要点をまとめると次の通りである。 1.原紙および各種塗工紙の色彩およびインキ転移による光学物性の変化を測定した結果、表面特性の微細な変化が色彩科学的因子、すなわち明度、彩度、色相などに大きく影響することが示され、その理論的解析を行った。 2.各種の条件下で染色した紙をスキャナーおよび分光光度計で計測した結果、紙と色材の相互作用による色彩科学的因子の変化が明瞭に現れることが示された。 3.各種の印刷色見本の印刷濃度計による測定から、色彩画像の明度、彩度、色相などの色彩科学的因子およびスクリーン線数、網点率などのカラー印刷関連因子と表面塗工条件との関係があきらかとなり、理論的解析を行った。 4.紙の表面の感触、色彩の人間の視覚による認識などのデータを用いた感性工学的解析により、人間によるメディアを通した情報受容に影響する因子が明かとなり、紙メディアの情報メディアとしての特徴が明かとなった。 5.第1年目のデータとあわせて、人間とメディアの相互作用に影響する因子を明らかにし、紙の物性と人間のメディア受容性を関係づけるモデルを構築しつつあり、マルチメディア時代における紙の感性工学的評価システムの体系化が進行中である。
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