本研究はマルチメディア時代にデジタル技術の進歩と共に生まれる紙メディアの諸問題の内、特に高品質の画像再現特性をもつ紙の表面特性の設計とその新たな測定法としての感性工学的評価法の追求を目的としているが、得られた成果は次の通りである。 第1年目はマルチメディア時代の色彩再現性に影響する紙の側の因子を表面物性の解析を中心に、また人間の感性工学的認識の一部として視覚による色彩認識および触覚による摩擦感に関する問題の検討を行った。特に紙の表面物性に関して備品として購入した高品位マイクロスコープにより検討を行ったところ。インクジェット方式の画像再現法では紙の特性としては表面平滑性および液体吸収性が影響し、さらに画像再現方式が人間の視覚に大きく影響することが分かった。塗工紙に於いては原紙の表面物性および塗工層のインキとの相互作用が画像再現に大きく影響するが、色彩計測によりある程度まで人間の色彩認識をシミュレート可能なことが判明した。紙の感性工学的な評価の一環として摩擦感テスターにより評価したところ、天然繊維と合成繊維の混抄により触覚が幅広く変えられることが分かった。 第2年目には精密に制御された表面物性をもつ紙に対する色彩画像情報の転移と人間の感覚による受容性の問題を中心に扱い、紙の物性値の各種評価法、色彩科学的測定法、感性工学的測定法を用いた解析を行ったところ、メディアの受容性に影響する紙の物理的因子が明かとなり、最後に電子メディアと共存下における紙メディアの消費を予測するための定性的モデルを構築した。
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