研究概要 |
本研究課題は、セルロースの過ヨウ素酸酸化によってえられる反応性アルデヒド基の特性を利用して、ジアルデヒドセルロースの酸化及び還元によってえられるポリカルボン酸の誘導体とポリ糖アルコール誘導体のNMRによる特性化の研究並びにアミノ化セルロースのアミノ基と酵素蛋白の末端アミノ基とを結合剤グルタルアルデヒドで共有結合させて新規な固定化酵素結合物を調製し、酵素固定化担体としての有用性を検討する研究からなる。アミノ化セルロースはジアルデヒドセルロースのヒドロキシルアミン試薬によるジオキシム化、生成物を還元してアミノ化生成物に変換した。その結果、以下のような成果が得られた。ポリ糖アルコール及びそのアセチル化物のNMRスペクトルにおいて、アセチル基のメチル基及びカルボニル基のプロトン^1H、^<13>C共鳴シグナルの詳細な解析によって分子内の酸化グルコース残基と元のグルコース残基を識別する方法及びメチル基プロトン強度から酸化度を推測する方法を示した。その他セルロース残基のC-2,C-3位の酸化・開裂によるNMR共鳴シグナルのシフトの挙動を詳細に解析した。次いでジアルデヒドセルロースからアミノ化セルロースを調製し、生成物のアミノ基と酵素蛋白の末端アミノ基を共有結合させて調製した新規な固定化酵素結合物がSEM電顕観察によりごわごわした分子集合の塊状を示し、アルギン酸ナトリウムで被膜処理すると、2倍以上の優れた耐用性、耐熱性のある固定化酵素に変換されることを認めた。しかしジアルデヒドセルロースからジオキシム化生成物の調製は、比較的定量的に収率よくえられるが、その還元によるアミノ化セルロースの調製が、理論導入ちっ素含量よりかなり低いことから還元による調製条件の検討に課題を残した。この結果、キチンから調製されるグルコース残基のC-2位のOH基がNH_2基で置換されたキトサンを出発物質とするのが有利であると判断された。
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