耐水紙製造の第一段階であるパルプのシアノエチル化(CE化)反応は、反応温度30〜50℃で容易に進行し、置換度(DS)0.15までのCE化パルプを調製できた。第二段階のカルバモイルエチル化(CB化)反応は常温でほぼ定量的に進み、第三段階のN-塩素化反応は0℃で1時間、20℃では15分でほぼ100%進行した。 N-塩素化パルプをシート化して得られた耐水紙の強度特性を検討した結果、乾燥及び湿潤引張り強度はDS0.04まで向上するが、さらにDSを上げても大きな向上は見られなかった。DS0.04以上では未処理紙の乾燥引張り強度に匹敵する値が得られた。破裂強度も引張り強度と同様の傾向を示したが、破裂の場合はDS0.02以上で未処理紙の乾燥強度を超える強度が得られた。耐折強度はDS0.04〜0.05に最大値を持つ山形の曲線を示し、この付近では湿潤強度が乾燥強度を上回った。引裂き強度はDS0.04まで低下し、その後は置換度が増加しても大きな低下は示さなかった。なお引裂き強度は長繊維パルプと混抄することにより改善できることが分かった。 湿潤紙力増強剤であるPAE樹脂を添加したシートと比較した場合、本耐水紙の湿潤強度はDS0.005〜0.01の極低置換度でPAE樹脂添加紙と同程度の強度が得られることが分かった。また本耐水紙は1カ月の長期水中浸漬でも強度低下が起こらなかったが、PAE樹脂添加紙は徐々に湿紙強度が低下した。
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