紙の耐水化の新手法として、抄紙前のパルプ繊維自体を化学改質し、表面に反応性基を付与したものを抄紙後乾燥工程で繊維間に耐水性結合を形成させ、従来の湿潤紙力増強剤添加紙をはるかに上回る優れた耐水紙を製造できた。本研究では耐水紙表面の反応度と強度特性を詳しく検討し最適な耐水化条件を追求するとともに、紙の表面解析により耐水性発現のメカニズムを検討した。研究成果を纏めると以下のようである。 1.本耐水紙の引張りおよび破裂強度は反応性基の置換度(DS)が0.04までは急激に向上するがそれ以上DSでは頭打ちとなった。耐折強度の変化は最も大きく、DS0.04付近で最大値を示し、特に湿潤強度の変化が著しかった。 2.水浸漬時間の影響を検討した結果、本耐水紙は水浸漬直後に得られる湿潤強度を一か月後も維持していることが分かった。 3.ESCAによる表面窒素分析の結果、ケルダール分析でDS0.03の試料がESCA分析ではDS0.267となった。したがって繊維のごく表面に置換基が密に存在することが分かった。 4.各種抄き合せシートの強度比較より、N-Cl基同士の反応が湿潤強度に支配的に働いていることが示唆された。また耐水化シートのATR-FTIRスペクトル解析の結果、N-Cl基同士の反応により形成されたと考えられる尿素結合の存在が確認された。
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