研究概要 |
周刃フライス用工具刃物にショットピーニング処理を施すによって、刃物の耐摩耗性を改善することを目的として実験を行い以下の結果を得た。処理による刃先先端の損傷を極力避けること、およびショット粒の照射速度を高め熱処理効果をより高めるためビッカース硬さ900相当、直径46μmの非常に小さな硬質ガラスビーズをショット粒として使用した。照射圧力は、2,3,4,5kgf/cm^2の4段階、照射時間は、1,2,4,8,16,32secの5段階、照射距離は250mmとした。刃物材種はSKH51,被削材はスプル-ス、下向き切削とした。マイクロビッカース硬さ試験機を用い、測定力を変えることによって圧子の圧痕深さを変え表面からの深さによる硬さ変化を測定した。圧痕深さ1μmから6μmにおいて、未処理刃物がビッカース硬さが1020から920程に減少しているのに対し、ショットピーニング処理刃物のうち加工硬化が十分認められたものは、ビッカース硬さが1220から1000程に減少した。圧痕深さに対する減少割合は深くなるにしたがって低くなった。処理効果は、照射圧力が3kgf/cm^2以上および照射時間が16sec以上あればあまり大きな差はみられなかった。ただし、処理することによって、未処理刃物に比較して刃角2等分線上に投影した刃先後退量が5μmから7μm生じた。このことはマイナスと考えられるが、この差も切削経過に伴う刃先後退量の増加割合が未処理刃物に対して処理刃物が低く、切削長300m付近で交差した。その時の刃先後退量はおよそ20μmであった。切削長に伴う刃先後退量の増加割合は、切削長が長くなるにしたがって低くなった。本年度は切削長300mまでしか行わなかったが、これらの結果から推測して切削長300m以上において、未処理刃物の後退量が処理刃物の後退量を上回り切削経過と伴にその差はますます大きくなるものと考えられた。
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