研究概要 |
本年度は,各種植物体から相分離プロセスによりリグノフェノール誘導体を合成するとともに,そのタンパク質に対するアフェニティーを従来のリグニン試料と比較,その構造と吸着活性相関に検討を加えた。 リグノクレゾールは,従来のリグニン試料と比較し約5〜10倍の極めて高いタンパク質アフィニティーを示した。リグノクレゾールの構造的特性は,針葉樹および広葉樹いずれにおいても樹種間で大差なかったが,そのBSA吸着活性は起源樹種により異なり,明確な樹種特性が認められた。また,BSA,γ-グロブリン,ヘモグロビン,β-グルコシダーゼいずれに対しても,その等電点付近で吸着活性は最大となり,最大吸着量にも全てのタンパク質に対してほとんど違いは認められなかった。 リグノフェノールの場合,BSA吸着活性は導入フェノール誘導体の構造にあまり影響されず,いずれも80〜90mg/g ligninに収束した。一方,リグノポリフェノールのBSA最大吸着能は,リグノモノフェノールと比較すると大幅に高く,特にカテコール,レゾルシノール,ピロガロール導入物では5倍以上の吸着活性を示した。多価フェノールにおける水酸基の分布に関しては,o-,m-,p-置換体の順にタンパク質アフェニティーは低下した。またアルキル置換基の導入により親和性の低下が認められ,芳香核への疎水基の導入はタンパク質吸着能を低下させることが明らかとなった。リグノモノフェノール・タンパク質複合体はpHを変動させても全く安定であり、吸着現象には電荷に影響されない因子,すなわち疎水結合が重要な役割を果たしていると考えられた。
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