研究概要 |
本年度は,天然リグニンより誘導したリグノフェノール誘導体の酵素固定化特性およびその機能を,分子構造との相関において考究するとともに,その生体機能素材(バイオリアクター坦体,アフィニティークロマト用素材など)としての活用に関し基礎的に検討を加えた。 リグノフェノール誘導体のタンパク質吸着機能発現には,側鎖フェノール核の構造のみならず,そのリグニン分子内での配向が重要に関与していること,フエノール性水酸基は,水系におけるリグニンの分散性向上,タンパク質との初期親和性に重要であり,水系でのリグノフェノール誘導体-タンパク質間の安定で強固な複合体形成には,さらに両者間の疎水的相互作用が重要であることを明らかにした。リグノフェノール誘導体のタンパク質吸着活性は,導入フェノール核の選択,その2次的疎水性コントロールにより制御可能であり,さらにリグニン芳香核のミグレーシヨンを伴う分子の2次的再配列により,従来のリグニン試料に対し約70倍までその活性を増幅させ得ることを示した。 リグノフェノール誘導体に固定化された酵素は,遊離酵素に匹敵する活性と特性を保持していること,その特性がリグノフェノール誘導体の特異的酵素固定化形態(高分子量タンパク質へのリグノフェノール誘導体の疎水的吸着)に基づくことを明らかにした。 酵素の迅速かつ容易な固定化,その完全脱着特性から,バイオリアクターシステムにおけるリサイクル型酵素固定化坦体としての活用を提案,その特性を既存の酵素固定化担体と比較,評価した。
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