研究概要 |
2次元フーリエ変換画像のパワースペクトル解析によって、細胞の形態を統計的に解析する研究が成果を上げている。本研究は、この手法とレプリカ法を応用することによって、木材の収縮大変形における細胞形態の寄与を定量的に解析することを目的とした。5種類の針葉樹の正常材とあて材の木口面の同一部位のレプリカを飽水状態から全乾状態に至る乾燥の前後で作成し、その顕微鏡写真を用いてフーリエ変換画像解析を行い、最も確率の高い細胞モデルを構築した。その結果、乾燥によって、細胞内こうは、正常材では縮小し、アテ材では拡大すること、明暸な生長輪を持たないアガチス材の仮道管の横断面においても、収縮異方性が認められること、樹種間に認められる収縮異方度の差異は、細胞形状に大きく依存し、細胞の形状が6角形(ヒノキ、ラジア-タパイン)から4角形(シトカスプル-ス)に近い形状になるにしたがって、放射壁のなす角度が大きくなり、異方性が小さくなることなどが明らかとなった。また、ラジア-タパインの早材および晩材仮道管の細胞モデルを構築し、乾燥前後におけるモデルの寸法形状の変化から、収縮率を求めた。早材の放射方向および接線方向の収縮率は、2.52%および5.46%、晩材のそれらは、7,23%および8.01%であった。木材を、早材と晩材より構成される層状モデルで近似し、それを用いて、放射方向と接線方向の収縮率を表現する式を求めた。モデルを用いて計算した値と実測値を比較検討した結果、木材の収縮挙動は、大略このモデルによって表現できることが明らかとなった。
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