平成7年度の研究は、当初の予定どおり進行している。すなわち、ゴボウからセコイソラリシレジノール合成酵素の粗酵素標品を大量に調製し、その精製を行うとともに、部分精製酵素による、コニフェリルアルコールからのセコイソラリシレジノールの生成反応の立体化学的性質について検討した。また、ガンピについても、セコイラソラリシレジノールの生成活性の季節変化について検討すると共に、リグナン生合成経路上での、エナンチオ選択的および立体区別的段階につき検討を行った。 本年度の研究では、ゴボウのセコイソラリシレジノール合成酵素の触媒する反応の立体化学的性質について、全く新しい知見が見いだされた。すなわち、この立体化学的性質は、既に申請者らが報告したレンギョウ属植物の酵素の場合と同様であると、当初予想されたが、これに反し、ゴボウの酵素とレンギョウの酵素では、それぞれ反対のエナンチオマーのセコイソラリシレジノールが生成することは明らかとなった。また、ガンピからセコイソラリシレジノール、ラリシレジノール、及びピノレジノールを単離し、そのエナンチオマー組成を決定した。その結果、これらのリグナンは、光学的には純粋でなく、これらのリグナンの生成の立体化学的機構は、レンギョウリグナンのそれとは全く異なることが示された。この結果は、リグナン生合成における立体化学的機構が、植物種によって多様であることを示しており、リグナン生合成機構を統一的に解明するには、さらに多くの植物種を用いて検討する必要があることを示している。よって、今後の研究に、ゴボウ、ガンピ以外の植物も材料に加えることを検討している。
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