研究概要 |
スギ心材のアルカリ性化による黒心材形成の遠因を明らかにする目的で,ヤブクグリ,ウラセバルおよびナカムラの3品種の各林分から,それそれ20〜22本の供試木を伐倒し,胸高直径,心材の生材含水率,明度,灰分量および温水抽出量を測定した。また,得られた灰部についてカリウムの定量分析を行った。 1. ヤブクグリの一部およびナカムラのすべての供試木の心材は,黒心を示し弱アルカリ性であった。黒心が弱アルカリ性を示す理由として,黒心には灰分(特にカリウム)が多いためと推測される。つまり,心材の明度は,カリウム量がある限度以下では高くほぼ一定値を示すが,カリウムの増加につれて低下し,ある値のカリウム量ではほぼ一定の低い値を示した。なお,灰分量とカリウム量との間には一次の相関関係があった。 2. 心材中に取り込まれる灰分量は,品種によって異なり,同一林分の品種内では胸高直径との間に正の相関関係が認められた。すなわち,心材の灰分量は遺伝的な要因と肥大成長に関係する立地条件ないしは環境要因によって左右される。しかし,灰分量は品種によって概ね決まっているので,心材のアルカリ性化への環境要因の関与の度合いは,品種間で異なると推測された。 3. スギ心材のアルカリ性化の直接の原因は,心材に取り込まれるカリウムイオンと考えて間違いなさそうである。しかし,カリウムイオン濃度に影響をおよぼす具体的な環境要因ないしは立地条件は未だ明らかではない。この点を今後検討する予定である。
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