近年、木材の横圧縮性の特徴を利用した加工法、材質改良、薬液注入促進法等が積極的に検討されている.これらの加工、あるいは処理方法を合理的に、かつ有効に行うためには、木材の横圧縮大変形のよる細胞、細胞集合体、年輪単位の変形の特徴、様式を明確にして、適正な処理を施すことが極めて重要である. 供試4樹種(スギ、ヒノキ、ベイマツ、カラマツ)による平成7年度の検討から、以下のことが明らかになった. 1)年輪ひずみの主体は、圧縮率50%においても、ベイマツ材の一部条件を除き、早材部の仮道管によって達成され、晩材部細胞の変形は認められない.2)半径方向に圧縮した材の年輪の変形は、早材部の局所位置で座屈細胞列が現れるが、座屈発生位置は、年輪構造、特に晩材の多少と関係を示して現れることが示唆された.3)細胞の変形は、仮道管半径壁の褶曲タイプ(S字型変形)とせん断変形タイプに2大別できる.この変形は、仮道管のR/T比と密接な関係を示す. しかし、7年度の検討から、直接観察法では、高い倍率での観察ができないこと、観察が極めて煩雑で、再三にわかって同じ細胞を鮮明に観察ができないことなども認めた.そこで8年度は新たにレプリカ法を導入して検討を加えた.またSEM観察も行った.その結果、8年度の検討から以下のことが明らかになった. 1)木材半径方向、45度方向、接線方向で、圧縮による年輪・細胞の変形様式が大きく異なり、それそれの方向の変形の特徴を明確にした.2)木材半径方向および45度方向の圧縮の場合、仮道管細胞の変形は壁孔から率先して変形が進行し、閉塞壁孔がはく離、破壊されることを認めた.また45度方向の圧縮の場合、圧縮率が大きくなると晩材細胞、放射組織近辺の仮道管細胞の壁に亀裂の現れるのと認めた.3)仮道管細胞壁中で特異な構造をしている壁孔は、樹種特性を示すものの、そのはく離、破壊の特徴を明確に認めた.また閉塞壁孔の質的性質に相違があることを明らかにした.
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