1、ゼブラフィシュの、初期胚発生過程におけるPGCsの形態及びその動態を組織学的に明らかにした。PGCsは、受精後6日目には生殖隆起付近に移動していた。また孵化期、21体節期、および6体節期に発生ステージを遡って組織切片を観察したところ、PGCs様の細胞が確認された。更にそれらのPGCs様細胞の計数を行ったところ、6体節期には既に6日目胚とほぼ同数のPGCs用細胞が存在した。このことから、本種のPGCsは6体節期以前に既に分化していると考えられた。 2、1細胞期から4細胞期にビオチン-デキストランを注入した標識胚と未標識胚との間で、中期胞胚期に重複胚を作成し、受精後6日目のキメラ固体中のPGCsの由来を調べたところ、標識と未標識の両胚由来のPGCsが確認された。このことから、中期胞胚期における胚の内部の位置の変化は生殖細胞の分化に影響を与えないもの考えられる。しかしながら、上方の胚盤由来のPGCsは下方由来のものに比べ、ほぼ同数か少なく、PGCsの分化と生殖隆起への移動に必要な要因についてさらに調べる必要があると考えられた。 3、ゼブラフィシュの2系統間、あるいはキンギョと3倍体のフナより作成された胚盤の下部を重複されたキメラ個体からは、両系統あるいは両亜種の生殖細胞由来の子孫が生まれることが明らかとなった。しかしながらその頻度には個体により差が見られ、キメラ個体の生殖細胞の分化に必要な要因についてさらに調べる必要があると考えられた。 4、キンギョの胞胚にゼブラフィッシュの胞胚の下部を注入したキメラ胚の生殖隆起には、両種のPGCsが観察された。しかし、両種の子孫を得るまでには至らなかった。
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