(1)異種間での胚盤再構築を可能にするために必要な嚢胚期以前のキンギョの発生段階を、組織学的、細胞学的、発生遺伝学的な視点から検討を加えた。20℃の培養下で同調卵割から非同調卵割への移行(中期胞胚期遷移)は、9回の同調卵割の後受精約6時間に起こり、この時期以降を中期胞胚期と定めた。中胚葉分化の指標となるgoosecoidとno tailの発現は受精後8時間に観察され、この時期以降を後期胞胚期と定めた。(2)キンギョおよびゼブラフィッシュの、初期胚発生過程におけるPGCsの形態及びその動態を組織学的に明らかにした。キンギョでは20℃の培養下で受精後30時間に組織学的に区別されるPGCsが胚全体に広く分布した。この時期のPGCsを生体外部から細胞の大きさによって区別できる可能性が示された。しかしながら、これ以前の発生段階では区別できなかった。ゼブラフィッシュでは、組織学的なPGCsを6体節期まで遡ることができた。(3)PGCsの起源を実験発生学的に検討した結果、キンギョのPGCsは中期胞胚期には分化する割球が決まっており、その多くは胚盤の下部に位置するという結果が示された。(4)ゼブラフィッシュの2系統間、あるいはキンギョと3倍体のフナより作成された胚盤の下部を重複されたキメラ個体からは、両系統あるいは両亜種の生殖細胞由来の子孫が生まれることが明らかとなった。しかしながらその頻度には個体により差が見られ、PGCsの分化に必要な要因についてさらに調べる必要があると考えられた。(5)中期胞胚期で胚盤再構築をおこなったキンギョとゼブラフィッシュのキメラ胚は正常に発生しなかった。キンギョの胞胚にゼブラフィッシュの胞胚の下部を注入したキメラ胚の生殖隆起には、両種のPGCsが観察された。しかし、移植細胞由来の子孫を得るまでには至らなかった。
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