研究概要 |
平成7年度は海産二枚貝類のエストロゲンの産生、分泌様式の解明を中心に検討した。 1.エストロゲンの動態と生合成能 マガキ、ホタテガイ卵巣のエストロゲンとして、エストロン(E_1)、エストラジオール(E_2)、エストリオール(E_3)の存在が確認され、マガキ、ホタテガイともにE_2が雌に特異的で主要なエストロゲンとして検出された。成熟にともなうE_2の上昇が認められ、その動態は生殖周期と明らかに同調していた。また、卵巣ホモジネートでのエストロゲン間での変換が確認され、特に、E_1⇔E_2間の変換が同程度見られ、ホタテガイでは成熟初期の個体での変換が著しかった。しかし、アンドロゲンからエストロゲンへの変換は今回の実験では確認できなかった。 2.エストロゲン産生細胞の検索 エストロゲン産生細胞の特定を、固定凍結切片を用いて免疫組織化学的に検討した。マガキでは、抗P-450アロマターゼ、抗3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、抗E_2抗体陽性細胞は検出されなかった。一方、ホタテガイ卵巣では、これらいずれの抗体に対しても陽性を示す細胞が生殖細管上皮に沿って観察され、電子顕微鏡観察から、その細胞はミトコンドリアと滑面小胞体を豊富に持つ、ステロイド産生細胞の特徴を備えていた。 以上の結果から,生殖細胞管周辺の細胞で合成されたエストラジオールが,二枚貝の性成熟に大きな役割をはたしている可能性が示唆された。
|