研究概要 |
平成7,8年度にわたり,性成熟に伴うエストロゲンの卵巣内での動態とその産生,さらに,卵膜セロトニン受容体に対するエストロゲンの機能解明を行った。 1.エストロゲンの動態とその産生 ホタテガイ,マガキの卵巣ではエストラジオール-17β(E_2)が主要なエストロゲンであり,卵形成に呼応するような動態を示した。また,ホタテガイでその生合成・代謝に関与する3β-HSD,P450アロマターゼ,17β-HSDが卵巣に存在することが明らかになり,特に,前二者とその最終産物であるE_2が局在する生殖細管周辺に分布する細胞の存在を見い出した。これらの事実は,卵巣内の特定の細胞で合成されるE_2は,その産生量を増加させることによって,卵形成を支配しているものと考えられる。 2.卵形成に伴う卵膜の5-HT受容体形成 [^3H]5-HT結合実験により,ホタテガイ,マガキの卵膜表面に5-HT特異結合の存在が明らかになり,ホタテガイの5-HT受容体サブタイプは5-HT_1/5-HT_2の両方の特性を持ち,マガキは比較的5-HT_1の特性を持ち多少異なっていた。また,E_2は5-HT受容体を明らかに卵膜に誘導し,その結果,産卵刺激としての5-HTへの感受性を卵形成過程で徐々に上げていく働きをしていることが明らかになった。 以上の結果から,生殖細管周辺の細胞で合成されたエストラジオールが,卵形成過程で予想される卵黄形成とならんで,来るべき産卵刺激に対応する意味で,卵膜表面への5-HT受容体の形成にも深く関与し,成熟から産卵まで広く関わっていることが明らかになった。今後,卵黄形成の機構を明らかにし,卵形成の詳細について分析する予定である。
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