日本産アオリイカはその研究代表者らの集団遺伝学的研究、生態学的研究から"シロイカ"、"アカイカ"および"クアイカ"の3種類に分けられ、これらの差は種レベルであると考えられることが明らかにされていたが、これらの3種はその分布域が明らかでなく、形態学的に識別が出来なかった。しかし、今年度の研究により、下記に示す点が新たに明らかにされ、3種の識別が可能になった。 1."シロイカ"は本州およびそれ以南小笠原、奄美大島、沖縄に広く分布する。 2."アカイカ"は奄美大島、沖縄など琉球諸島に分布し、現在のところ北限は徳島県である。 3."クアイカ"は奄美大島、沖縄など琉球諸島および小笠原に分布し、その産卵生態から分布域はサンゴ礁が発達した浅海域に限られると考えられる。 4."シロイカ"、"アカイカ"および"クアイカ"は従来は識別する分類形質が明らかにされていなかったが、今回の研究により、日本沿岸に分布するこれら3種は、ロ-ト表面の色素胞の種類とその配列により、明確に識別できることが明らかにされた。 以上、日本沿岸の3種の分布はかなり明らかにされ、3種の識別も外部形態から可能になったが、2種類以上が同時に分布する地域でのそれぞれの種の分布の特徴、および日本南部にしか分布しない"アカイカ"及び"クアイカ"の分布の特性はその北限などを含めて未だ明らかにされていないことから、さらにこれらの種分化に関わる情報を収集する必要がある。
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