日本産アオリイカは、研究代表者らの生態学的研究および集団遺伝学的研究により、シロイカ、アカイカ、クアイカの3種類に分けられ、これらの差が種レベルであるらしいことが明らかにされた。従来形態学的には3種の識別が不可能であったが、この研究の結果日本沿岸に分布する3種はロ-ト表面の色素方の種類と配列により明確に識別できることが明らかになった。この識別方法を用いてアオリイカの分布を調べたところ、以下に示すことが明らかになった。 1.シロイカは本州、伊豆大島、八丈島、小笠原、奄美大島、琉球諸島、フィリピン、タイに分布し、その分布範囲は3種の中で最も広く、北限は青森県までのびる。 2.アカイカは八丈島、徳島県、奄美大島、琉球諸島、フィリピンに分布し、成体はシロイカより大型になる。産卵場の水深はシロイカと比べて深い。 3.クアイカは奄美大島、琉球諸島、小笠原などのサンゴ礁域の浅海に限って分布し、成体は3種の中で最も小型である。 また、今年度は従来のアイソザイムを用いた識別方法に加えて、新たにDNAによる種分化の検討を試みた。イカ類のDNAはその抽出が極めて困難であったが、抽出方法を検討し、DNA分析の可能性を模索した結果、その可能性が高いことが明らかにされたため、来年度は新たに、DNAを用いた遺伝生化学的解析を試みることとした。
|