有毒渦鞭毛藻の分子プローブによる超高感度モニタリング法の開発

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07660244
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 左子 芳彦 京都大学, 農学部, 講師 (60153970)
• キーワード: 有毒渦鞭毛藻 / 麻痺性貝毒 / 分子分類 / フローサイトメトリー / モノクローナル抗体 / リボソームRNA / DNAプローブ / 種間・種内識別

研究概要

麻痺性貝毒の原因藻である渦鞭毛藻Alexandrium属は形態的に酷似し、原因藻の分類同定に混乱が生じている.そこでこれまでの研究で作製したA. tamarenseの細胞の外殻鎧板に特異的に反応するモノクローナル抗体を用いて、フローサイトメトリーによる高感度で迅速かつ定量的なモニタリング法の確立を目的とした.本年度得られた結果は以下の通りである。
(1)培養細胞を2%ホルムアルデヒドで固定した後M8751-1抗体で螢光ラベルを行うことにより、フローサイトメーターを用いて、A. tamarenseおよびA. catenellaをそれぞれ効率よく定量的に検出可能であることが明らかになった。
(2)本抗体の反応性は、異なった温度、光強度、栄養条件下で培養された両種の培養においても、細胞の種々の増殖段階にかかわらず安定であることが示された。
(3)本抗体はA. tamarenseに対して非常に強い反応性を示し、A. catenellaのそれの約5倍であった。またA. insuetum,A. ostenfeldii, A. lusitanicum等のAlexandrium属藻類にも弱い反応性を示したが、本属以外の有毒・有害渦鞭毛藻であるGymnodinium catenatum, G. mikimotoi, Prorocentrum micansや赤潮ラフィド藻のChattonella属やHeterosigma属および代表的なケイ藻や緑藻には反応しなかった。従って本抗体は、A. tamarenseおよびA. catenellaに強い反応特異性を有していた。
(4)M8751-1抗体は、A. tamarenseおよびA. catenellaの栄養細胞だけでなく、雌雄異株接合によって形成させた運動性接合子やシストにもほぼ同程度の反応性を示すことが明らかになった。従って本抗体は現場試料に対して有効であることが強く示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Sako Y. et al.: "Specific monoclonal antibodies and DNA probes for the identification of the toxic dinoflagellate genus Alexandrium." Harmful Marine Algal Blooms. 6. 77-82 (1995)
• [文献書誌] Sako Y. et al.: "Studies on stability and heredity of PSP toxin composition the toxic dinoflagellate Alexandrium." Harmful Marine Algal Blooms. 6. 345-350 (1995)
• [文献書誌] Adachi M. et al.: "Population analysis of dinoflagellate Alexandrium species using sequences of the 5.8S ribosomal DNA and internal transcribed spacer regions." J. phycol.31(in press). (1996)
• [文献書誌] Sako Y. et al.: "Detection of the toxic dinoflagellates Alexandriumspecies by flow cytometry using a monoclonal antibody" Toxic Phytoplankton. 7(in press). (1996)
• [文献書誌] Ishida Y. et al.: "Molecular Approaches to Food Safety Issues Involving Toxic Microorganisms" Alaken Inc., 39-49 (1995)