研究概要 |
麻痺性貝毒はフグ毒と同様に強力なNa+チャンネル阻害剤であるサキシトキシンやゴニオトキシンによってもたらされる貝毒で、原因渦鞭毛藻Alexandrium tamarenesおよびA. catenellaは世界中に分布を広げ深刻な問題となっている。しかしながら有毒渦鞭毛藻Alexandrium属は形態学的に酷似し、原因藻の分類同定に混乱が生じ簡便で客観的なモニタリング法の開発が求められている。本研究は種特異的モノクローナル抗体およびDNAプローブを用いて、有毒渦鞭毛藻Alexandrium属の種間識別を行うとともに本藻モニタリングの基礎の確立を目的とし、以下のような研究成果が得られた。 (1)モノクローナル抗体M8751-1はA. catenella細胞よりもA. tamarense細胞に5〜10倍強く反応し、蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターにより効率よく識別、定量が可能であった。またA. insuetum, A. ostenfeldii, A. lusitanicum等のAlexandrium属藻類にも弱い反応性を示したが、本属以外の有毒・有害渦鞭毛藻であるGymnodinium catenaturm, G. mikimotoi, prorocentrum micansや赤潮ラフィド藻のChattonella属やHeterosigma属および代表的なケイ藻や緑藻には反応しなかった。 (2)抗体M8751-1は現場海域で発生しているA. tamarenseの細胞に特異的に反応し、蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターにより検出可能であることが明らかになった。しかし、A. catenellaの現場サンプルには反応が低く、反応性を増大させる必要が示唆された。 (3)A. tamarenseとA. catenellaのrRNA遺伝子のITS(インターナルスペーサー)領域に各々特異的な蛍光DNAプローブを作製し反応特異性を調べたところ、catプローブはA. catenellaにtamプローブはA. tamarenseのゲノムDNAにのみ反応し、蛍光in situハイブリダイゼーション法により有毒な両種の識別が可能となった。
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