研究概要 |
本年度は凍結もしくはアルコール固定したマイワシ,カタクチイワシおよびウルメイワシの筋肉を約0.1g無菌的に取り出し,液体窒素で凍結粉砕後,プロテイナーゼKにて消化し,フェノール-クロロホルムによりDNAを抽出した.次いで,PCR反応を行い,イワシミトコンドリアDNAのD-loopおよびシトクロムb部分の増幅を行った結果,約500および300の長さのDNAの増幅に成功した。このDNAをアガロースゲル電気泳動後,ゲルより切り出し,抽出精製し,鋳型とし,ダイデオキシ法によりダイレクトシーケンス反応を行い,自動シーケンサーを用い塩基配列の解読を行った.その結果,マイワシ、ウルメイワシ、およびカタクチイワシのミトコンドリアD-loop遺伝子の内500塩基長およびシトクロムb遺伝子の内300塩基長の塩基配列を決定した.3種間における両遺伝子の変異を比較した結果,D-loopの進化速度がシトクロムbより早く,系群判定に有用なことが明らかとなった。次に,鳥取、長崎、宮崎で採取したマイワシ各1個体よりD-loopを解析した結果,サンプル間で約3%配列が違っていることが明らかになり、塩基配列により系統判別が可能と考えられた. 一方,平成8年度により詳細な解析を行うため,長崎県五島沖,瀬戸内海および日本海山陰沖にて巻き網および稚魚ネットでマイワシ,カタクチイワシおよびウルメイワシの採集を行い,採集した成魚,稚魚および卵を10検体ずつアルコール固定,保存している.
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