研究概要 |
タラバガニ類はゾエアとして孵化し、3〜4回脱皮してグロコトエに変態、1回の脱皮で稚ガニとなる。本種の資源培養に必要な基礎的知見を得るために幼生飼育実験を行なった。 (1)ゾエア期の最適餌料 天然におけるゾエアの餌料は各種の動植物プランクトンである。水温10℃以下の季節に根室周辺海域に大量増殖する珪藻Thalassiosira spp.を培養し、タラバガニおよびハナサキガニのゾエアに投餌した。第1期ゾエアにより珪藻の活発な摂餌が観察されたので、餌料とし珪藻およびアルテミアノ-プリウスの単独投与区および併用投与区を設けて、水温役10℃で飼育した。珪藻単独投与でゾエアII期およびIII期へ脱皮したが、変態するに至らなかった。アルテミア単独区およびアルテミア・珪藻併用区のゾエア期の生残率は45〜90%の範囲で変動した。 (2)グロコトエ期の摂餌の有無 ゾエア期のアルテミア単独区(A)およびアルテミア・珪藻併用区(B)で変態したグロコトエをそれぞれ投餌区および無投餌区に分けて稚ガニまで飼育した。A,B両群の群内では投餌,無投餌の間で生残率および脱皮間日数には相違がなかった。(Aで投餌区27〜33%,18〜19日,無投餌区23〜38%,18〜19日。Bではそれぞれ54〜62%,19日および57〜61%,19日)しかし群間では生残率に有意義な差があり、Bが高い値であった。この事実はグロコトエが摂餌を行なわずその栄養をゾエア期の餌料に依存していることを示唆している。 (3)口部付属肢の形態変化 ゾエアおよび稚ガニは石灰化した強大な大顎,刺毛あるいは歯を備えた第1,第2小顎,および内肢に刺毛を備えた第1〜3顎脚が発達しているが、グロコトエでは一時的に退化している。グロコトエの中腸線の組織学的観察では脂肪粒の取り込みが観察された。これはグロコトエがnon-feeding stageであるとの考えを支持している。
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