研究概要 |
1.幼生飼育 昨年度の実験では、タラバガニ、ハナサキガニのゾエアは珪藻を摂餌することにより健全に発育することが示されたので、本年度も天然より分離・培養したTalassiosira nordenskioeldiiを飼育水に転加してArtemiaのノウプリアスを与えて飼育した。ハナサキガニの孵化は2月、タラバガニは3-4月に行われた。それぞれの生存率はゾエア期29.6,27.6%、グロコトエ期81.0,65.5%であった。なお幼生は種々の環境条件および餌料条件で飼育して生残率および成長に及ぼすそれらの影響を明らかにするとともに、それらを材料として口器に続く消化器官である前胃・中腸腺の形態変化、中腸腺の脂肪分布および体脂肪の変動を調べた。2.飼育条件の影響 珪藻単独投与の場合、水温10℃<では3令での死亡率は著しく高く変態できなかったが、7-8℃ではゾエアからグロコトエ期の通算の生存率はハナサキガニ・タラバガニそれぞれ35.0,3.1%であった。低温では脱皮に日数を要したが、7-8℃がタラバガニ類の適温と考えられる。3.前胃の形態変化 ゾエアでは胃の内壁に多数の刺毛が発達し。中腸腺への濾過装置が完成している。グロコトエでは噴門・幽門胃間の弁および濾過装置における刺毛はじめ胃内の刺毛は著しく減少してゾエア期のような食物をこねる作用には向かない。堅い食物の破砕に適した胃臼、側齒は稚ガニにおいて初めて形成された。4.中腸腺の脂肪蓄積 ゾエアの中腸腺細胞(R-cell)には大きな脂肪滴が認められ、初期のグロコトエでは腺腔側に分布した。中腸腺の形態のグロコトエ期における伸張に応じて脂肪粒は小さくなり体腔側に移動した。上記3,4の事実はフロコトエがnon-feedingであることに関係している。なお体脂肪含量はグロコトエの初期から後期にかけて減少し、この時期の主要なエネルギー源であるかとが示された。
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