研究概要 |
オーストラリア産のラン藻Anabaena circinalisを大量培養し、同種の麻痺性貝毒生産能と毒の組成をHPLCと機器分析により調査した。同種がN-sulfocarbamoyl基をもつC1,C2を主成分とする特異なサキシトキシン同族体群を生産することをはじめて分光学的に証明した。また、培養後期に毒の相当量が細胞崩壊に伴い環境中に放出されることを明らかにした。さらに、同種から側鎖および11位に硫酸基を導入するN-およびO-sulfotransferaseを検出し、基質特異性を調べて生合成経路の一部を明らかにした。 アメリカ産の大型ラン藻Lyngbya wolleiが既知のdecarbamoyl毒群に加えて未知の数成分を生産することを発見し、これらを精製単離して機器分析による構造解析を行った。いずれも側鎖にアセチル基を有しており、12位が還元された2成分を含む5種の新規サキシトキシン同族体であることが明らかとなり、本種が渦鞭毛藻やラン藻とは全くことなる変換酵素系をもつことを推定した。 国内外から単藻培養体および天然の“アオコ"試料を含む20種40サンプルのラン藻を集め、HPLCによるサキシトキシン同族体の検索を実施した。第一次スクリーニングでは多種から毒に相当するピークが検出されたが、新たに開発した精密分析法で調査することにより、すべてが疑似ピークであることが明らかになった。単純にHPLCの結果から麻痺性貝毒生産性を結論することの危険性を示すとともに、ラン藻によるサキシトキシン同族体生産はかなり限定された種によることが推定された。
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