これまで水産生物に確認されたオピン類はオクトピン、アラノピン、ストロンビン、タウロピンおよびβ-アラノピンの5種である。オピン類については嫌気的条件下のエネルギー産生と深く関わっていることや、海綿動物から棘皮動物にいたる無脊椎動物に広く分布していることなどが明らかにされているが、食品を通じて人間に摂取される可能性が大きいにもかかわらずオピン類の生物活性作用については殆ど知見がない。前年度ではオピンの一種であるオクトピンのラット血清コレステロール濃度に及ぼす影響を調べた。高コレステロール飼料に1.5%オクトピンを同時に投与して飼育した場合、オクトピン添加区は無添加区(対照区)に比べ、有意に総コレステロールおよびVLDL+LDL-コレステロールが低く、逆にHDL-コレステロールは有意に高かった。無コレステロール飼料に1.5%オクトピンを添加した場合も同様にVLDL+LDL-コレステロールが有意に低下するとともに、総コレステロールも減少する傾向が認められた。オクトピンがラットの血清コレステロールを低下させる作用を有することを報告した。今年度はオピンの一種のタウロピンについて、ラットコレステロール代謝への影響を調べた。実験動物はSprague-Dawley系雄ラット(3週齢)を1群4匹用いた。実験飼料は0.5%コレステロールを含む高コレステロール条件の基礎飼料に2〜0.1%のタウロピンを添加した。タウロピン無添加区を対照とした。飼料、飲料水は自由摂取させた。2週間飼育後、ネンブタール麻酔下で採血することにより屠殺し、ただちに肝臓などの臓器を摘出し秤量した。血清中の総コレステロールは酵素法で、肝臓の総コレステロールはSobel&Fernandlezの方法によって測定した。飼育期間中の観察ではタウロピン0.5%以上投与群で下痢を起こすラットが多く、体重の増加も対照群に比較して少なかった。各臓器重量ではタウロピン投与群の盲腸が肥大していたが、その他の臓器には大きな差は見られなかった。血清の脂質濃度では、タウロピン0.5%以上投与群の総コレステロール、トリグリセリドが対照群より高い傾向が見られ、特に、2%投与群で総コレステロールが対照群に比べ有意に高かった。しかし、肝臓の総コレステロールは対照群と有意差がなかった。
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