研究概要 |
フグは体内,特に肝臓,卵巣に高濃度の毒を蓄積しており,肝臓中ではTTXの一部は生体成分と結合している可能性を筆者らは報告した。しかし,結合様式については全く不明であり,この点を明らかにするためには,微細な細胞レベルでの毒の様子を調べる必要がある。そこで本研究では,これまで検討されていない細胞内におけるフグ毒について調べるため,まず,毒性が高い肝臓を試料に選び,肝細胞内での毒の分布ならびに存在形態を明らかにすることを目的とした。 初年度(平成7年)は,フロースルー方式ホモジナイザー(LH-41型,ヤマト科学)を導入し,再現性のよい肝臓組織の破壊ならびに細胞分画法を検討し,電子顕微鏡で細胞小器官の確認を行った。温和な細胞破壊を行うためには,乳棒の回転数は280rpmが最適であった。遠心分離法で細胞分画し,核画分(800xg,2分),ミトコンドリア画分(1.2x10^4xg,20分),ミクロソーム画分(1.0x10^5xg,60分),可溶性画分に大別した。各画分のTTX毒量をマウス試験法およびHPLC-蛍光検出法で調べたところ,毒量の大部分は可溶性画分に認められたが,核画分,ミトコンドリア画分にも少量毒が存在することが明らかにされた。そこで,これらの画分を電子顕微鏡で観察したところ,複数の小器官が観察されたため,ミトコンドリア画分については密度勾配遠心分離法でさらに細分化して分画したが,毒性を示す画分を特定するにはいたらなかった。
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