研究概要 |
1.日本各地(8地域)から入手したヤマトシジミの水抽出液を調製し,マウス静脈投与により毒性を検索したところ,すべての検体(121検体)が有毒であった。毒性には雄雌差・季節差はないが多少の地域差がみられた。マシジミおよびセタシジミもヤマトシジミよりは毒性はかなり弱いが,やはり有毒であることが判明した。3種シジミとも内臓は無毒,一部筋肉系部位が有毒で,ヤマトシジミは足筋,マシジミは水管,セタシジミは外套筋の毒性が特に高かった。シジミ類の他にアサリ,ホタテガイ,カキなど12種二枚貝についても同様に毒性を検索したがすべて無毒であった。 2.3種シジミ毒は麻痺性貝毒や下痢性貝毒のような低分子量ではなく,二枚貝の毒としては例のないタンパク毒であることを認めた。ヤマトシジミの足筋抽出液を用いて毒成分を疎水クロマト,ゲルろ過,イオン交換FPLCなどの各種クロマトにより精製し,電気泳動的に均一な標品を得た。毒は分子量25000,pl7.7の弱塩基性タンパク質で,分子量6000のサブユニットより成ると推定された。精製毒のマウス静脈投与でのLD_<50>は11μg/kg程度と毒性はきわめて強く,また,マウス致死活性の他に強い溶血活性も示すことが判明したが,抗菌活性は認められなかった。マシジミおよびセタシジミの毒も,クロマト挙動などからヤマトシジミ毒と性状が酷似していると判断された。 3.3種シジミの毒はいずれも加熱に対して著しく不安定であること,マウス経口投与では毒性を示さないことから食品衛生上の問題はないと判断された。
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